ちゃんと伝えられたら
次から次へと涙があふれ出す。

こんな時に泣いてしまったら、坂口さんを困らせるだけなのに。

どうしていつも私はこうなんだろう。

「俺は志保の涙に弱い。」

坂口さんはあの時のように私を包み込む。

「すっ、すいません、私…。」

「俺はそんなに志保を責めているつもりはないんだがな。」

そしてふっと笑う。

「志保は俺が怖いか?」

ああ、私達の時間があの雨の日に戻っている。

私は顔を上げると、坂口さんを見つめる。

「私は坂口さんが怖いわけではありません。」

そして涙が浮かぶぐちゃぐちゃの顔で微笑む。

「好きです…。」

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