ちゃんと伝えられたら
17
私達は翌朝、何とか会社の始業時間ギリギリに時間差で滑り込んだ。

そして向かい合ったデスクからお互いを伺い合う。

「おはようございます、“坂口さん”。」

「おはよう、“篠田”。」

そんな挨拶が気恥ずかしい。

しかしそんな甘い気分に浸っているほど、私達に余裕はない。

「こないだの書類はどこまで進んだ?」

この辺は情け容赦ない綾人さん。

そう言えば昨日は寺本さんの事もあって、仕事を少し残してしまった。

「後は最終の添削だけです。」

「それを早く仕上げて、次の書類にかかってくれ。」

そう言いながら、坂口さんは私のデスクに近づいて来た。

「今から外へ出てくる。資料室。」

綾人さんは指をさしながら、私に微笑む。

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