ちゃんと伝えられたら
「ありがとうございます。沢野さんが根気よく指導して下さったから…。」

涙がぽろぽろあふれ出す。

「初めに私が篠田の指導に行き詰っていた頃、坂口さんが言ってくれたの。」

沢野さんは私の頭を撫でながら、苦笑する。

「時間はかかるが、この子は使えるようになると思うって。自分のしている仕事をきちんと理解しているからって。」

そんな時から坂口さんは…。

「坂口さんはきちんと篠田の事を見ていると思うよ。これからも仕事頑張ろうね。」

沢野さんはそう言うと、先に資料室を出て行った。

「涙が止まったら、ちゃんと仕事に戻るのよ。」

そういう言葉を残して。

やっとデスクに戻った私はかかって来た電話を受けた。

ああ、あの声だ。

当然、坂口さんを呼び出すのだろう。

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