ちゃんと伝えられたら
私は曖昧にうなずいた。

「私の父が社長に昇格することが内定したのです。その右腕として坂口さんに会社に来てほしいそうです。」

確か坂口さんが“三島常務”と呼んでいた人。

「本当はその事を含んでの今回のお話だったのです。父は坂口さんを高く評価しています。そして坂口さんにとっても良いお話だと思うのです。」

確かにうちの会社に比べたら、今回のプロジェクトの取引会社の方がかなり規模が大きい。

私は首をかしげる。

「どうして私にそんなお話をされるんですか?」

その女性、三島さんは一瞬ためらってから、私に真っ直ぐ視線を合わせた。

「坂口さんを…、諦めてもらえませんか?」

「えっ?」

私は三島さんの言葉が理解出来ない。

「坂口さんの将来を考えると、父の会社に来ることが最善だと思うのです。」

「でも…。」

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