ちゃんと伝えられたら
19
何で私はここに来てしまったんだろう。

私は道人さんのラーメン屋さんの前で立ちつくす。

ちょうどお昼の忙しい時間が終わって、夜に向かっての仕込みが行われている頃だろうか。

私はくるりと身体の向きを変えた。

「志保ちゃん?」

その聞き慣れた温かい声に私は涙が出そうになる。

「なあ、志保ちゃんだろ?こんな時間来てもらっても何も出せないんだけどな。」

道人さんが私に近づいてくる。

「あっ…、良いんです。たまたま通りかかっただけですから…。」

私は顔を見られないように、そそくさとその場を立ち去ろうとした。

「志保ちゃん。」

私は道人さんに腕を掴まれた。

「どうしたの?また兄貴と何かあったの?」

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