ちゃんと伝えられたら
すると道人さんは私の手を放して、綾人さんの方を見た。

「済まないな、兄貴。昨日は俺が兄貴の代わりをしてやったんだ。」

そして道人さんは綾人さんを睨めつけた。

「志保ちゃんに何があったかは聞いていないけど、こんな状態に志保ちゃんをしてしまったのは兄貴なんだろう?」

そんな道人さんに私は声を上げる。

「違うんです。綾人さんが悪いんじゃないの。」

道人さんはしょうがないなという表情を見せる。

「志保ちゃんが言った通り、初めは兄貴に黙っていようと思っていた。でも…。」

道人さんは私から綾人さんに視線を移す。

「うわ言でずっと兄貴の名前を呼んでいた。もうそれを聞いていたらたまらなくなった。」

「道人…。」

「兄貴、志保ちゃんを守ってやれよ。ただ付いて来いだけじゃダメなんだ。」

「えっ?」

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