ちゃんと伝えられたら
「そんな事を考えてしまうと、ちゃんと罰を受けてしまうものなんですね。もうこりごりです。」

そしてもう一度寺本さんは丁寧に私にお礼を言うと電話を切った。

「志保?」

私は座ったままで、私の横に立つ綾人さんにもたれかかる。

「さあ、帰りましょうか、綾人さん。やっぱり少し疲れてしまいました。」

「そうだな。」

綾人さんがそっと私を抱き寄せる。

「お疲れ様。よく頑張ったな。」

もう私はこの人のこういう言葉があればいい。

張り詰められた心が、優しく解放されていく。

私はそっと目を閉じて、綾人さんを感じる。

「さあ、片づけをしてしまおう。帰りそびれてしまう。」

するとそこに課長が入って来た。

「済まない。電話に捕まっていて、ここへ来るのが遅くなってしまった。」

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