ちゃんと伝えられたら
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「これで大体の物は運んだな。」

私の身の回りの物がすっかりなくなった部屋をぐるりと見渡す。

大きな家電だけが不自然に残っている。

あれから道人さんに軽トラックを借りた綾人さんの作業は手早かった。

「これが出来るなら、自分の家もすぐに片付くのにな。」

私は掃除機を掛けながら、少々呆れたように笑った。

「あの家の管理は志保に任すよ。」

どうやら掃除機の音に負けずに、私の言葉は綾人さんに聞こえていたようだ。

「もちろん手伝えることは手伝うけどな。」

私は掃除機を車に積んでもらうように綾人さんに頼んだ。

綾人さんが外へ出て行った。

「ああ、こんな形で引っ越しをするとは思わなかったな。」

これから新しい生活が始まる期待とともに、これまでの事が思いだされて妙に寂しい。

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