ちゃんと伝えられたら
すると綾人さんは優しく首を振った。

「こういう大事な事は俺が一人で決めて良い事じゃない。志保の言葉が欲しい。」

どうしていつも私はこうなんだろう。

大事な言葉は自分の中に閉じ込めてしまう。

「綾人さんと結婚してあげても良いですよ。」

ちょっと照れくさくて、そんな言い方をしてみる。

「ああ、頭を下げてお願いしたいくらいだよ。」

突っ込まれると思っていた私は、意外な綾人さんの反応に驚いた。

「家では志保、会社では俺が指導権を握ればいい。」

綾人さんはニッコリと微笑む。

「早く家に帰ろう。…俺達の家に。」

「綾人さん。」

「何だ?」

「私が何を考えているか分からない時は、今みたいにちゃんと聞いて下さいね。
私も言葉にして伝えるように努力しますから。」

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