ちゃんと伝えられたら
もしかして、放り出されちゃう?

「篠田。」

その瞬間、坂口さんは私の居る後部座席に乗り込んで来た。

「えっ?」

そして優しく私を抱きしめた。

「すまない。お前を責めているつもりじゃないんだ。」

濡れている身体に人肌はとても温かい。

「坂口さんが濡れてしまいます。」

私は慌てて、坂口さんから離れようとした。

しかし坂口さんはそれを拒否する。

「篠田はこうしているのが迷惑か?」

そんな優しい事を言われてしまったら…。

「坂口さん、ずるいです。涙が止まらなくなってしまいます。」

私は雨が降っている間、坂口さんの胸を借りて気が済むまで泣いた。

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