ちゃんと伝えられたら
何とかいつものようにのらりくらりかわすしかない。

坂口さんとの事は絶対話せない。

会社にも知られたくないし、ましては発注先に印象が悪い。

カフェで寺本さんと仕方なく向かい合って座る。

「坂口さんにお願いしていたんですけどね、なかなかいいお返事がもらえなかったので、直接実力行使に出ました。」

いかにも出来る営業マンの風貌をした寺本さんは少し緊張しているようだ。

「初めての会議に欠席されたでしょう?かえってその事が気になって、次の会議でどんな人が来るのかなって気になっていました。」

身体を少し前のめりにさせて、手を組む寺本さん。

「私は書類担当が主でしたから、その相手先の担当者が気になるのは当然でしょう?でもその前に初会議の会議録のチェックが回って来た時に正直驚きました。」

寺本さんは私に優しく目を合わせた。

「会議に出ていない人があれだけの内容を理解しているなんて。頭が固いお局様が頭に浮かびました。これは手強いかもしれないと。」

寺本さんはくすくす笑う。

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