ちゃんと伝えられたら
「いいじゃないか、あんな兄貴の様子、初めてだったから驚いたんだ。篠田さんの返事がすごく嬉しかったんだろうな。」

道人さんは私に対してニヤッと笑う。

「俺が前に店に来た時に、付き合っている彼氏が居ないか聞いただろう?」

私はコクリと首を縦に振る。

「俺に話をすり替えて、何気に探りを入れてやったんだぜ、なあ、兄貴。」

道人さんの何とも得意げな顔。

「…それが見え見えだったから、早くあそこから離れたくて早歩きになったんだ。」

坂口さんはぼそりとつぶやいた。

私は二人を何度も交互に見る。

私が知らない坂口さんの様子が道人さんに語られることに、何だか気恥ずかしく感じる。

でも…、坂口さんにもそんな面があるんだ。

少し照れたような表情を見せる坂口さんが新鮮に感じる。

すると道人さんは私に向かって、頭を下げた。

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