遺品整理
私は 黙々と作業した

押入れからは
古い箱がいくつもでてきた

父に聞いても知らないと言うし
もう何年も開けられていないようだ

そのまま捨てようかとも迷ったが
とりあえず 開けてみる

独身の頃の荷物だろう
可愛らしい飾り物や 花柄の小物が
きちんと整理されていた

他の箱には
母の学生時代の卒業証書や
資格の証書も入っていた
アルバムだけの箱もある

生まれた時から 学生時代
若い頃
写真館での記念写真も
祖父母との家族写真も
お土産 寄せ書 写真 

母の嫌いなはずのものが
大事にしまわれてした

やるせなくなった

お土産などいらない
思い出などいらない
そう言っていたあの人は
自分の思い出だけ大切に持っていた

私は
怒りと 悲しさと
羨ましさと
ないまぜになった気持ちのまま

また 箱を閉じた

父はのんきにテレビを見ていた 

この人はいつもそうだ

私が怒られようと
母が暴れようと
テレビを見ている人だった

こんなことなら
来なければよかった
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