教育係の私が後輩から…
翌日、出勤すると直ぐに課長へ移動願いを出した。
本当は誠一郎の顔なんて見たくないから、出勤したくなかった。
いつもと違う体の違和感に、昨夜の事が脳裏に浮かび、夢だと思いたくとも、現実だったと思い知らさられる。
「先輩…昨日は…」
話しかけないで!
今は、声も聞きたくない。
だが、そんな事も言ってられないのが、現実の世界。
「猪瀬君、おはよう!」
出来るだけいつもと変わらない様に…
誰にも気づかれない様に…
いつもの私を装おう。
「え?先輩…」
でも、許した訳じゃない!
いつか、罪は償わせる。
あなたにとって、一番屈辱な方法で!
「えーと、今日13時に、
立花興業の井ノ川さんがお見栄になるから
其までに資料コピーして用意しといて?
それからこの企画、君に任せるから宜しく!」
「えっ!? ちょっ…」
『酷い…猪瀬さんに丸投げして…』
『猪瀬さん、僕たちがフォローしますから?
あんな女居なくても大丈夫ですよ?』
『そうですよ? 私達も手伝いますから?』
「あっいえ…大丈夫です。
一人で何とかしますから…」
周囲から向けられる冷たい視線なんて、今更気にならない。
このまま仕事放棄すれば、数日後には資料課へ戻される。そしたら、憎い彼とも顔会わせずに済む。
「佐伯さん!
部長からも、言われてると思うけど、
猪瀬君に無理な仕事振らない様にね?
1年だけの在席なんだから…
もっと上手くやってくれないかな?」
「どうせ、1年したら居なくなるから?
適当に相手しとけば良い?
だったら、教育係なんて必要無いですよね!?
今すぐ、教育係から外して下さい!」
私は資料課へ行ってくると言って、部屋(課)を出た。
それからの私は、本来の部署へ顔出さず、毎日資料課に篭っていた。