教育係の私が後輩から…

泣き疲れて、いつのまにか眠っていたわたしだが、玄関のドアノブを回す音で、眼が覚める。

『ガチャガチャ!』

そして、鍵を開ける音に耳を塞ぐ。

「宣美! 居るんだろ!?」

どうして?
就任式パーティーは…

「宣美!?」

私から布団を剥ぎ取る誠一郎。

「ヤッ帰って!」

「わかった…お前も俺を捨てるんだな?」

え?…

聞いたことのない誠一郎の冷たく低い声に、起き上がると、私に背を向ける彼が居た。

嘘っ…違う…そんな事言いたいんじゃない。

「待って!側に居て…お願い…私をひとりにしないで…好きなの…あなたが好きで好きで…」

泣き崩れる私へ差し出された大きな手。

「やっと言ったな?」

私は初めて誰かの胸で泣いた。

「時間がない。このまま行くぞ?」

「えっ? ダメ! やっぱり行けない…」

「煩い!つべこべ言ってないで、俺の隣で笑ってれば良い。俺が必ずお前を守る!」

誠一郎は私を担ぎ、車へと押し込んだ。

車が着いた場所は、式典の行われてるホテルの地下駐車場。

「誠一郎、私こんな格好ではホストなんて無理!」

「分かってる。着替えは用意してあるから、行くぞ?」

首を振る私を誠一郎は”チッ”っと舌打ちして、再び、私を担ぎ上げた。

「ご案内します。」

聞き覚えのある声に、顔を上げれば、そこには恭子が居た。





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