教育係の私が後輩から…
「ほら、力入れずに、右手で握って…」

「こう?」

「…うん…良いよ。」

「左手はつめを立てづに、優しく添えるだけで良いから。」

「これで良い?」

「あー上手いよ。」

「あっ…」

「もう…だから力を入れるなって…」

「ごめんなさい…大丈夫?」

「…まだ有るから大丈夫。俺がやって見せるから、今日は観てて?」

「う、うん…ホントごめんね?」

「大丈夫。回数こなせば出来るようになるから。」

「はい…」

「しかし、観られながら、するのも緊張するよな?」

「え? 左手でするの?」

「俺はいつもこうする。」

「痛くない?」

「大丈夫。優しくするから。」

「………」

誠一郎のやり方に、私は息を止めて観ていた。

「ほら、出来た! 簡単だろ?」

「だが、宣美はまだ掌の上ではするなよ? 危ないからな! 暫くはまな板の上に置いてやる事! 良いな?」

「はーい。」

「よし、魚も焼けたし、飯にするか?」

「味噌汁美味しい。でも知らなかったなぁ。誠一郎が豆腐の味噌汁が好きだったなんて?」

「味噌汁だけじゃないさ、俺は豆腐が好きなんだ。」

昨日、ひょんな話から、味噌汁の具の話になり、誠一郎が味噌汁の具は豆腐が一番だ。と、いう話から、今日、誠一郎に豆腐の味噌汁の作れ方を教えて貰っていたのだ。

「豆腐料理は数え切れないほどあるけど、簡単に使えて、一年を通して酒のツマミにも良いからな?温めても、冷やしても旨い。豆腐の味噌漬けは、ビールや、焼酎は勿論、ワインにも合う。」

「ワイン?」

「そう。チーズみたいで旨いぞ?
その上低カロリーだ。」

「食べたい。今度それの作り方教えて?」




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