教育係の私が後輩から…
企画課へ入ると直ぐ、同僚らから、憐憫(れんびん)の眼差しを向けられ、頭を抱える七本を見つけた。
「七本 Y社の提案書と資料見せて?」
「え? いや…それは…
お前だけには見せるなって、
部長に言われてるから…」
「チッあのハゲ!…
私が勝手に見たことにすれば良いから!」
それでも、七本は見せるのを渋っていた。
「良いい皆んな!?
私が勝手に見たんだからね!?」
「さぁ、早く見せて!」
ほら、っと言って手を出し、彼から資料を見せて貰った。
井手冬馬…八角所属か…
「もしもし、ご無沙汰しております佐伯です。実はお願いが…………はい。先方には私からお話しさせていただきますので………そちらには一切ご迷惑お掛けしませんので………はい。有り難うございます。宜しくお願いします。」
「七本、手土産、青福堂の朔日餅!」
「え?」
「明日、相馬社長宅行くんでしょう?
青福堂の朔日餅持っていきな!
それで朔日餅は…」
「相馬社長が、
青福堂の朔日餅が好きな事くらい知ってるよ!
先月だって、朝一で買って持っていった。
でもダメだったんだよ!
もう、良いから放っといてくれ!!」
「七本さん?
明日もう一度謝りに行きましょう?
僕も一緒に行きますから?」
「猪瀬さん…」
「猪瀬君、あたし、今日はもう帰るから!
あんた達も時間になったら、
さっさと帰んなよ?
じゃ、お先に!」
「先輩? 何をするんですか?」
「………」
誠一郎の問いかけに答えず、私は社を出たその足で東京駅に向かった。