教育係の私が後輩から…

「佐伯、どうしたその顔…?」

「なんでもない。それより、七本に私の仕事引き継いで欲しいの?」

「はぁ!? どう言うことだよ?」

「私、今日で辞める。だから」

こいつ、またなに言い出した!?

「ちょっと来い!」

こいつの事だから、こんなとこで聞ける話じゃないだろ?

「どうするかな…資料課だと、空気悪いし…。
取り敢えず、あのカフェで良いか?
この時間なら会社の人間は来ないだろ?」

残念な事に、俺は猪瀬さんに負けた。
負けたと言うより、佐伯が猪瀬さんを選んだんだ。
あっそれが、負けたと言うんだよな…?
既に佐伯の腹には猪瀬さんの子がいる。

カフェに入ると、コーヒーとホットミルクを頼んだ。

「ホットミルクって、七本珍しい物飲むんだね?」

「馬鹿か!? ホットミルクはお前のだよ? 俺はコーヒー!」

「えー!? 私、牛乳苦手なんだけど?」

「お前、母親って自覚あんの?
さっきもコーヒー飲んでただろ? コーヒーにはカフェインがだな…」

「ありがとう… でも、もういい。」

もういいってどう言う事だよ!?

「何があった? 話してみろ?」

佐伯は、副社長から言われた事を話してくれた。

「なんだよそれ!?」

「仕方ないよ…私に付いたイメージだもん。」

「だからあの時、俺は皆んなに話して誤解解こうって言ったんだのよ!?」

「ありがとう…でも同じだったと思う。」

なんで、お前はいつも悟ったかのように、平気で居られるんだよ!?
あー腹たつ!!

で、なんで、この場にあの人は居ないんだよ!?
何してるんだ!?
こいつがこんな辛い思いしてるのに!?

「彼奴はなんて言ってるんだよ!?」

「彼は私を守ろうとしてくれた。でも…」

「身を引くってか?… 不器用な女だな?」

「馬鹿って言って良いよ?」

「じゃ、馬鹿な女!」

「……」

「馬鹿女なら、馬鹿な男と釣り合うと思わないか?」

「え?」

「俺、マジで佐伯の事好きなんだ。 俺の事考えてみてくれないか? 腹の子の為にも?」

腹の子が猪瀬さんの子だろうと、構わない。佐伯の子であるのは間違いない。
俺の子として、愛して育てる自信はある。

「ありがとう。でも、ごめん。
七本には頼れない。」

佐伯の真剣な眼差し。
こんな事になっていても、その先には俺は居ないなか…?
そんな事くらい初めから分かってた。
分かっていたのに、云わずにはいれなかった。

「やっぱり猪瀬さんが、好きなんだな?」

「誰の幸せも奪いたくない… でも、七本の気持ちは嬉しかった。じゃ、行くね?」

「気を付けろよ!?
何かあったら、直ぐ連絡しろよ?」

「ありがとう。」






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