教育係の私が後輩から…
佐伯が辞めさせられて、俺は猪瀬さんに怒りを覚えていた。
父親が… 副社長がなんと言おうと、好きな女を守るのが男だろ!?
いくら、佐伯が自ら身を引いたとしても…
あの人なら、佐伯を守る事出来たはずなのに…
なぜ、佐伯を守らなかった!?
俺は毎日の様に、猪瀬さんへ無言の威圧的視線を向けていた。
そんな時、猪瀬さんに旧本社ビルの資料課へ呼ばれた。
そして、何とかして専務のしっぽを掴みたいから、協力してくれと言われた。
専務のしっぽを掴めば、佐伯を陥れた証拠も出て来るだろうと…。
でも、専務のしっぽを掴んだところで、ホントに佐伯の為になるのか?
だが、どれだけ調べても、専務の黒い噂はあっても、証拠は掴めずにいた。
そんな時、友人の結婚式に訪れていたホテルで、副社長と、受付嬢の日比野さんが、腕を組んでエレベーターへと向かっていった。
え?
なんであの二人が?
そして二人の乗ったエレベーターは客室のある階に止まった。
おいおい、マジかよ…
見てはいけない物を見てしまった。と、思うと同時に、嫌な予感がした。
俺はそのままホテルのロビーで待っていた。
そして3時間ほどして、二人はエレベーターを降りて来た。
こりゃー間違いないだろ…?
副社長が自社の受付嬢と不倫してるなんて、猪瀬さんに言える訳もなく、どうしたものかと、悩み暫く黙っていた。
そんな時、日比野さんがまた、俺を食事に誘って来た。
「日比野さんってさ? 付き合ってる人いるんじゃないの?」
「え? やっだぁー居ないですよ?」と、言って、口元に手を当てて笑った。
あっ!
その手…。
その指輪にも見覚えがある。
「日比野さん、そのブレスレットってどこで買ったの?」
「え?」
「いや、もう直ぐ、妹の誕生日で、アクセサリーが欲しいって言ってたから?
それ素敵だなぁって思って?
まぁ、日比野さんが着けてるからだろうけど?」
「うふふ。これ、自分で作ったんです。 だから世界に1つだけなんです。
良かったら、妹さんの作ってあげましょうか?」
「え? あ、うん。 一度妹に聞いてみるよ? また、その時は頼むね?」
間違いない。
俺が見たのアレだ!
猪瀬さんに報告する…か?
でも、もしかして、副社長が関わっていたら…
猪瀬さんは、どれだけ傷つくだろう。
自分の父親が、自分の愛してる人を傷付けたとしったら…
そんな事を、暫く悩んでいたら、佐伯から突然電話があって、今から重役会議に参加すると言う。
「はぁ? なんでお前が?」
「ちょっと、爆弾を落としに…。」
爆弾…?
「それで、暫くしたら、受付の日比野さんを連れて来て欲しいの…
さっき私の方で、説得はしてあるんだけど、流石に1人で来るのは不安だろうし、一緒に重役会議室まで来てくれる?」
「佐伯…爆弾って…副社長と日比野さんの事か?」
「………」
「もしかして、お前を突き落としたのが彼女だって知ってたのか?」
「…うん。少し前にね?」