教育係の私が後輩から…

「先輩…昨日は…」

「猪瀬君、おはよう!」

「え?先輩…」

翌日彼女へ何度も謝ろうとしたが、いつもと変わらない様子。
だが、一度も俺と目を会わせてくれなかった。
そして、何もなかったかのように、仕事してる。

もしかして…許してくれてるのか?
いや、許すわけない。
あんな酷いことして…
俺が彼女なら、絶対許さない。

「猪瀬君?」 

「…っはい!」

「今日、
立花興業の井ノ川さんが、
13時にお見栄になるから、
それまでに資料コピーして用意しといて?
 それからこの企画、
後は全て君に任せるから宜しく!」

「えっ!? ちょっ…」

『ひでぇー まだ、何も分からない猪瀬さんに丸投げかよ?』
『猪瀬さん、僕達がフォローしますから? 
 あんな女、居なくても大丈夫ですよ?』
『そうですよ!? 私達も手伝いますから?』

酷いのは俺だ。
彼女は憎い俺と仕事したくないから、俺に全て投げたんだ。
休憩もとらず、残業までして作った資料を俺に渡して…
本当なら自分で最後までやり遂げたかった筈なのに…
俺は彼女から仕事までも奪ってしまった。

「あっいえ…大丈夫です。
一人で何とかしますから…」

何がなんでもこれは俺が一人で成し遂げる。

「佐伯さん、部長からも、
言われてると思うけど、
猪瀬君に無理な仕事振らない様にね?
 部の皆も心配してるから?
 1年だけの在席なんだから…
 もっと上手くやってくれないかな?」

誰かが課長に告げ口したか…?
大きなお世話なのに…

「どうせ、1年したら居なくなるから?
 適当に相手しとけば良い?
 だったら、教育係なんて必要無いですよね!?
 今すぐ、教育係から外して下さい!」

彼女はそのまま部屋(企画課)を出た。
それからの彼女は全く企画課へ顔を出さなくなった。




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