教育係の私が後輩から…

翌日、七本と待ち合わせしていた、会社近くのカフェへ向かった。

七本は予定通り、青福堂の朔日餅を買って来ていた。
後はこれを持って、七本と一緒に頭を下げるしかない。頭を下げたからと、許されるかは分からない。でも、今の俺もこれしか思いつかない。

「兎に角、有馬社長へ頭下げましょう?」

「あの…猪瀬さん。
心配して頂いてホントありがとうございます。
でも、ここからは、
僕一人で大丈夫ですから…」

「いえ、僕も行きます。」

「でも…猪瀬さんに頭下げさせることは…」

「僕が社長の孫だろうと、関係ないですよ?
 今は、一番の下っぱですから…
それに、あの人を見たいんです。」

「えっ? 有馬社長をですか?」

多分、彼女は来る。
俺は見たい。
彼女が、どんな仕事をしてきたか…
どんな仕事をするのか…
本当の彼女の姿を…
社内で見せることのない姿を見たい。

俺達は七本の車で、A&Mの社長、有馬社長宅へ向かった。



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