教育係の私が後輩から…
「俺、初めて来たわ!」
七本は旧社屋の中を物珍しそうに見渡していた。
「だろうね? 私もあの人に教えて貰わなかったら、来なかったし? あっ、私は左遷で結局来る事になってたか?」
私はアハハと、笑い、そのまま二人を地下の資料課まで案内した。
「何だよ、暗いし、めっちゃ湿気くせぇー…こんな所に、おまえよく三年も居れたよな? 」
「まぁここは、ここで楽しかったよ?」
「で、話はなんだ? ここに来たのは、みんなの前では話せない事だろ?」
「私の仕事の仕方教えるって言ったでしょ?」
「そう言う事ですか?」
棚に置いてあった資料を、既に見ていた誠一郎が、私の代わりに、話し出した。
「猪瀬さん、そう言う事って何ですか?」
「ここにあるのは古い資料ばかりで、データーベースに載っていない事柄まで載ってる。これを佐伯先輩は利用していた。と、言う事ですね?」
「そう言う事。
ここには、取引のある会社だけじゃなくて、
まだ取引してない会社の情報まである。
社長の趣味趣向、あらゆる情報が詰まってる。
それも社長だけじゃなくて、
社長の家族に関してもだよ?
猪瀬君、ここを作ったのは、
あなたのお爺様であるの前社長よ?
前社長は、いろんな場でお会いした方々の
情報を事細かく記して残した。
どんな形が必要になるか分からないから。
そして今、ここを守ってるのは現社長である
あなたのお祖母様。」
「だから、有馬社長の朔日餅も…」
「そう。ここの書類から知った。
そして、私は沢山の人達とのパイプを作る事が、
出来た。」
「じゃ、Y社の社長に佐伯が会えたのは…」
「以前から個人的にパイプを作ってたから!」
「すっげぇー宝の山じゃん!?」
興奮する七本に私は頷く。