教育係の私が後輩から…

離島(資料課)から、この度、企画部へ出戻りとなった。
多分、キクさんの何らかの力が働いたのだらう。

それが分かったのは出戻りした日の、朝礼の時だった。

「本日付で、人事部から、企画部に移動になった猪瀬君だ。
みんな宜しく頼むよ?
社長のお孫さんだ、くれぐれも粗相のないように!」

部長の隣に並ぶ彼は、いつもキクさんが自慢してた孫の誠一郎だった。

「社長の孫だとか関係無く、御指導よろしくお願いします。」と、挨拶する姿に女性陣から歓喜の声があげていた。

「えっと…彼の教育係は誰に…」

「部長、佐伯さんにお願いしても宜しいですか?」

「…あーちょうど良い。佐伯さん頼むよ?」

はぁ!?
なぜ私を指名した??
で、部長は、何がちょうど良い??

「部長!私、教育係なんて嫌ですよ!?」

冗談じゃないわよ!
長いこと離れていたから、調べたいこと沢山有るんだから!

「これは、決定事項だ!君は上司の命令が聞けないのか!?」
部長の相も変わらない、見下した言い方に怒りを覚える。

「佐伯先輩宜しくお願いします。」

誠一郎は私に近寄ると、みんなの前でキスをした。

!?

『バッシン!』

「痛ってぇ…」

「何するのよ!?」

『ちょっ、佐伯、君は何を!
社長のお孫さんに手をあげるとは…
兎に角、上に報告するから!
きっと処罰が下るだろうから、そのつもりで!!』

なんで私が処罰されるのよ!?
先にセクハラしたのは向こうだろ!?

社長の孫なら、なにやっても良いのか!?
キクさん、あんたの御自慢の孫、とんでもない馬鹿じゃん!?




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