教育係の私が後輩から…
「じゃ、まずは自分のパソコン設定して!
それが終わったら、ここにある資料に目を通して、入力しなさい。」
『猪瀬君、いや、猪瀬さん、分からないことが合ったら何でも僕達に聞いてください。あんな女の言うことなんて聞かなくて良いですから?』
『そうですよ?私達も資料の打ち込みくらい出来ますから言ってくださいね?』
『いきなりこんな大量の資料…可愛そう…私、お手伝いしますね?』
「あっいえ、大丈夫です。
これも勉強ですから、本当に困った時はお願いします。」
3時間後、誠一郎は部署の者と食堂へと向かった。
やっぱり、ただのボンボンか…?
私はコーヒーを飲みながら、過去の資料に目を通していた。
「先輩、休憩中すいません。
少し良いですか?」
えっ?
声をかけたのは誠一郎だった。
時計を見ると、彼が部署(部屋)を出ていって10分しか経っていない。
「え? あんたお昼は?」
「ちょっと、気になることがあったので、戻ってきました。」
「??」
「打ち込みしてて、気になったんですが?」
「なに?」
「ここ数年のS社との取引ですが、データ上の数字と、こっちの資料の数字がおかしくないですか?
あと、ここなんですが、ここはJM-1568の間違いでは?」
へぇー気がついたんだぁ?
短時間であれだけの量を入力して、これを見つけるなんて、この男…もしかして、もしかする?
その時、ドアが開き、部長が入ってきた。
「佐伯さん!
君は何を遣らせてるのかね!?
ろくに休憩も取らせず、仕事させるなんて、教育係失格だぞ!?
「部長違うんです! 僕が…」
猪瀬君が弁明してくれるのを、私が遮った。
「部長?
私の遣り方が気に入らないなら、彼の教育係、他の人に代えて下さって良いですけど?
その方が私も自分なりの仕事が出来ますから?」
どうせ、私に仕事させたくなくて、彼が私を指名したのを幸い、私に教育係押し付けたでしょうけど?
「ッ…兎に角、彼に、そこ迄させなくても良いから!
会社は専務が居るんだから?
良いね!?」
部長は私は念を押して部屋を出ていった。
「すいません先輩…僕のせいで…」
「気にしなくて良いわよ?
慣れてるから?」
今、会社内部は副社長派と専務派で対立しているらしい。
専務とは社長の次女の婿で、噂では、かなりのやり手らしく、会社の業績に、随分貢献したと言われてる。
だが、その一方では、随分悪どい仕事の遣り方で、子会社を泣かせているらしく、社内にも反感を持ってる者も、少なくないらしい。
そして長女の婿である、副社長はおっとりとした性格で、権力争いを嫌うタイプらしい。