教育係の私が後輩から…

休憩時間が終わると、再び部長が現れた。
そして、猪瀬君の教育方法について、私に指導がはいった。

どうやら部長は専務派の様だ。

「次期社長が誰かなんて、
私にはどうでもいいです! 
それに猪瀬君が誰だろうと、今は私の部下です。 部下に仕事させて何が悪いんですか?」

「だから、
仕事をさせるなと言ってるんじゃなくて、
もっと有るだろ? 
誰でも出来るような小口で簡単な仕事が?」

「仕事に大も小も無いし、
どんな仕事にも簡単も糞もないです!」

「君は私の言ってる意味が分からないのか!? 
 それなら私にも考えがあるが?!」

「部長はまた、
3年前のように、
邪魔な私を離れ島に追いやるおつもりですか?」

3年前、私が資料課へとばされた根源となった当時の課長はこの人だった。
今は、昇格して部長になっているが、当時はパソコンの操作さえ知らない、糞オヤジだった。

「別に私は構いませんよ? 
好きで戻ってきた訳じゃありませんから?
何処へ行っても、
自分のやるべき仕事をやるだけです。 
それが資料室の整理でも、
3億の仕事でも同じですから?」

その後、同僚から冷たい視線を向けられながらも、ひたすら仕事した。

「先輩、タバコ付き合ってくれませんか?」

「私タバコ吸わないから、
一人で行ってきなさい。」

「じゃ、コーヒー付き合って下さい!」

半ば強引に給湯室迄、連れてこられた私は、仕方なく誠一郎にコーヒーを入れてあげた。

「先輩頑張りすぎですよ?」

「頑張らないと男の人には敵わないのよ?  
 ブランクもあるしね?」

「敵わなくても良いじゃないですか?」

??

「男は女の子守るのも仕事ですよ?」

女の子…か…
私には似合わない言葉だなぁ…

「そうね? 
弱くて可愛い女の子を守ってあげなさい? 
私は大丈夫だから?
心配してくれてありがとう。
先、戻るわね?」

再び仕事モードに入っていた私は、就業時間が過ぎてる事さえ、気づかずにいた。

「先輩?
何時まで仕事するつもりですか?」

「えっ!?」

モニターを塞ぐように顔を出した誠一郎に、私は驚き仰け反った。

「驚かさないでよ?」

「もう、8時回ってますよ?」

「え? あーほんとだ?」

「お腹空きませんか?
お昼も食べてないでしょ?」

「そう言われたら空いてるかも?」

「じゃ、
今日のお詫びにご馳走させたください?」

「お詫び?」

「今朝のキスと、昼間部長に怒られたお詫び?
でも、給料日前なんで僕の手料理ですけど?」

「手料理って…
あんたの家なんて行かないわよ!?
それに給料日前だろうと、
あんたなら其れなりに持ってるでしょ?
カードだって有るだろうし!」

「ん~確かに有りますね?
でも、材料買っちゃいましたし?」
誠一郎は、そう言うとスーパーの袋を見せた。

「帰って、家族とでも食べれば?」

「実家に帰るのめんどいですし
ほらこれ、良いお酒も有るんですけど?」

誠一郎の見せた木箱入りのお酒。

「っそれ!?」

幻と言われる、超お高い黒○焼酎!

「知り合いから頂いたんですけど…」

「わかった!
 私の家で良いわ?
 でも、不味いもの食べさせないでよ?」

「勿論です!
 独り暮らしも長いんで、
僕、結構上手いですよ?」

彼の言葉通り、料理はとても美味しく、お酒もすすんだ。




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