教育係の私が後輩から…
翌日、
昨夜書いた退職届けを鞄に入れ、出かけようと、玄関を開けると、そこには誠一郎が立っていた。

「どうしたの!?
もう顔見せないで! って言ったでしょ!? 貴方には、もう用ないんだけど?」

「俺には有る! どうしてあんなこと言った!?」

「本当の事だからよ!?」

「あんな嘘、俺が信じるとでも思ってるのか!?」

「信じようと、信じまいと、本当のことよ?」

「じゃ何故泣いた? 目が腫れてるぞ?」

「私が泣く訳ないでしょ? 目が腫れてるのは、朝までDVD見て寝不足だからよ!」

「へぇー、DVD見てるのに、俺の名前呼びながら、号泣するんだ? 外まで聞こえてたぞ?」

「えっ!?
もしかして、一晩中此処に居たの?」

「ああ。ずっと、宣美の声聞いてた。」

「バカじゃない!?
ご近所から通報されたら、どうするのよ!? もし、ストーカーに間違えられて捕まったら…?」

「俺が捕まって、会社が危うい状態に陥っても、その時は、宣美が助けてくれるだろ?」

なにこの人…
言ってる事、滅茶苦茶過ぎるでしょ?

諦めなきゃいけないって、分かってるのに…
彼の言葉が、嬉しくて堪らない。

わたし…
こんなにこの人の事好きなの?
嬉しくて、枯れたはずの涙が溢れてくる?

「で? 俺と結婚するよな?」

「…しない。」

「はぁ?」

「反対されてるのに、出来る訳ないでしょ!?」

「あいつらのことなんて、気にしなくて良いって言ってるだろ?」

「あいつらって? あんたの親よ!? 兎に角、あんたは会社を継ぐ人!
私は、キクさんに頼まれた、仕方なく、あんたの教育系してただけ!!」

余計な事まで、教育したかもしれないけど…

兎に角、私は取引先と寝てる様な女なの!!」

「それは、間違った噂だろ!?」

「あんた一人が、そう思ってるだけかもよ??
兎に角、お腹の子はあんたの子でもないし、あんたと結婚なんてしな!
もう、あんた達一族には関わりたくない!
分かったら帰りなさい。
それで、もう、ここには来ないで…。
自分に相応しい相手を選ぶことね?」

「さようなら。」と言って、その場に誠一郎をおき、ひとり会社へ向った。




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