幼なじみの榛名くんは甘えたがり。



楓くんと特に会話をすることはなく、あっという間にわたしの家の前まで着いた。


時刻は夕方の6時を過ぎている。
おそらく、榛名くんはもう家に帰ってきているはず。


家の中から榛名くんが出てきてしまった瞬間、アウトだ。



「あ、えっと、いつも送ってくれてありがとう」


内心ヒヤヒヤしながら、口を動かす。


「いえ。俺が勝手にやってるだけですから」


なんとかして早く家に入りたいわたしは、
楓くんのほうは見ず、家の鍵を探し、そのまま中に入ろうとした。



「じゃ、じゃあ……またね」


少し冷たい態度を取ってしまったかもしれないけど、こればかりは仕方ない。


鍵をガチャッと開けて、家の中に入ろうとしたら。



「……まって、先輩」


そんな声が聞こえて、

振り向く間もなく、

後ろから腕を引かれて、

楓くんに抱きしめられてしまった。

< 139 / 391 >

この作品をシェア

pagetop