幼なじみの榛名くんは甘えたがり。
楓くんと特に会話をすることはなく、あっという間にわたしの家の前まで着いた。
時刻は夕方の6時を過ぎている。
おそらく、榛名くんはもう家に帰ってきているはず。
家の中から榛名くんが出てきてしまった瞬間、アウトだ。
「あ、えっと、いつも送ってくれてありがとう」
内心ヒヤヒヤしながら、口を動かす。
「いえ。俺が勝手にやってるだけですから」
なんとかして早く家に入りたいわたしは、
楓くんのほうは見ず、家の鍵を探し、そのまま中に入ろうとした。
「じゃ、じゃあ……またね」
少し冷たい態度を取ってしまったかもしれないけど、こればかりは仕方ない。
鍵をガチャッと開けて、家の中に入ろうとしたら。
「……まって、先輩」
そんな声が聞こえて、
振り向く間もなく、
後ろから腕を引かれて、
楓くんに抱きしめられてしまった。