幼なじみの榛名くんは甘えたがり。
わたしがそう言うと、相変わらず余裕そうな表情は崩さないまま。
「2度と近づかないのは無理かもね」
フッと笑いながら、付け足しで
「どうせ、これから全部もらう予定なのにね」と、意味深な言葉をささやく。
「意味わかんない……!いいからさっさとここから出て行ってよ!」
「あーあ、怒らせちゃった?」
これで怒らない人がいたら連れてきてほしいくらい。
少なくともわたしは、ファーストキスをなんでもない人に奪われて許せるほど心の広い人間じゃない。
「んじゃ、今日は帰るよ」
わたしから離れて図書室を出て行こうとしたと思えば。
足を止めて、わたしのほうを振り向いて。
「またね、雛乃」
と、言って立ち去っていった。