幼なじみの榛名くんは甘えたがり。
「いま、俺が雛乃先輩に迫ろうと思えば迫れるんですよ」
いつもの優しい楓くんとは違う……。
身体を縮こまらせて、自然と肩に力が入る。
そんなわたしの様子を見ても、楓くんは一歩も引く気はない。
すると、楓くんの綺麗な指先が、わたしの唇に触れてきた。
「……やっ」
触れられて、変な感じがして、思わず声が漏れて抵抗しようとしたけど、それは無駄なようで。
「抵抗したって、力じゃ敵わないんですよ。年下でも、俺は男ですから」
いま、目の前にいる楓くんは、わたしの知らない楓くんだ……。
いつも、優しくて、気を使ってくれて、
ただの後輩だった楓くんはどこにもいない。
知らなかった……。
楓くんに、こんな男らしい一面があったなんて。