幼なじみの榛名くんは甘えたがり。
好きなら伝えてしまえ。



人混みの波を歩き続けること数分。


ひとけのない場所に連れてこられた。


歩いている時、榛名くんはわたしのほうは振り向こうとはせず無言で、ただひたすらわたしの手を引いて歩いていた。


そして今、ようやく立ち止まり、こちらを振り返った。



シーンと静まり返ったこの空間と、
榛名くんと2人っきりになっている状況のせいで、一気に緊張が走る。



榛名くんはわたしを見つめたまま、何も言ってこない。


さっきからつかんでいる手も離そうとはせず、さらにギュッと握ってきた。


その動作に胸がキュッと縮まって、好きという気持ちがさらにブワッと溢れてくる。



……たぶん、今のわたしの顔は赤い気がする。


好きと気づいてしまったら、意識せずに接することなんて器用なことできない。


自分はここまで単純で、わかりやすいタイプだとは思っていなかった。


……全然余裕がない。

< 286 / 391 >

この作品をシェア

pagetop