幼なじみの榛名くんは甘えたがり。
引っ越す先は、わたしの家の近くだと以前から聞いていたので、そんなに遠くはない。
だけど、いま当たり前のように一緒にいる生活はもうあと数日で終わってしまうわけで。
「はぁぁぁ…なによ、そのかわいい理由は」
「かわいくない…もん」
「いやー、わたしが男だったら間違いなく雛乃を彼女にしたいと思うわ。あの自由人王子にはもったいないような気がしてくるわ」
「離れたくないって思っちゃうのワガママかな?」
ここ数日、わたしは少しでも榛名くんのそばにいたいなぁと思って、家ではずっとべったり甘えてしまっている。
前はわたしより榛名くんのほうが甘えてきていたのに、今はそれが逆転している。
「別にワガママではないんじゃない?好きな人と一緒にいたいって思う気持ちは当然だと思うしー?」
「やだなぁ……さびしいなぁ」
「もう、それはわたしじゃなくて榛名くんに言うことでしょうが!」
杏奈は呆れながらそう言った。