限りない愛~甘い彼に心揺れて~
ドラマや漫画からこういう時に、「なにしているんだよ」と登場するけれど、実際そういうものを経験したこともなければ、聞いたこともない。

でも、ヒーローはピンチになった時に登場する。もう一度心の中で強く呼んだ。

大ちゃん!

すると、私のテレパシーが届いたのかノックとともにドアが開かれた。中の返事を聞く前に開けるほど、切羽詰まった大ちゃんがそこに……あれ?


「失礼します。会長、ご無沙汰しております」

「おお、豊川くんじゃないか。変わりなく元気そうだね」

「はい」


まさかの豊川さん登場で私はガックリと肩を落とす。豊川さんはちらっと私を見て、会長に頭を下げた。


「突然で申し訳ありませんが、会長が来社していると専務の耳に入りまして、ぜひとも寄っていただくよう話をしてきてほしいと言われまして」

「稲葉くんの顔も見に行くつもりだよ。こっちが済んだら行くから待つように話してくれないかな」

「それが、大変申し訳ありませんが、実は三時には外出する予定がありまして……」
< 147 / 202 >

この作品をシェア

pagetop