限りない愛~甘い彼に心揺れて~
運転手さんが急いで降りてきて、後部座席のドアを開けた。行き先は病院かと訊ねるが、家がいいと会長の指示が出る。

運転手さんは会長の指示だけでなく、大ちゃんの見解を確認するかのように彼を見た。

大ちゃんは静かに頷く。


「今夜はそちらに帰りますので、大人しく寝ていてくださいね」

「もちろん分かっとる。ふぅ、孫におぶられる日が来るとはな……年取ったな」

「他のお年寄りよりはまだまだお元気ですから、大丈夫ですよ。な、真帆」

「あ、はい。会長、お気を付けてお帰りください」


大ちゃんの上着と一緒に持ってきていたブランケットを膝にかけた。会長から何かボソッと声が聞こえた気がしたが、聞き取れなかったし、気のせいだったかも。

こちらを見ることなく、前にだけ向いて「出て」と指示していた。嫌われているのは分かるけど、無視されるのは辛い。

それでも、遠ざかっていく車が見えなくなるまで頭を下げた。


「あ、大ちゃん、はい」

「ああ、ありがとう。悪かったな、ごめんな」
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