限りない愛~甘い彼に心揺れて~
寒そうに腕をさする大ちゃんに、預かっていた上着を渡す。彼は袖を通しながら、謝った。

大ちゃんは何も悪いことをしていないと思うが……もしかして、私との交際を白紙にするべく謝ってきた?

親密な関係に見えたユリナさんとの姿が即時に思い出される。まだその姿を見てから、あまり時間が経っていないから鮮明に浮かび上がる。

ユリナさんが大ちゃんの耳元で嬉しそうな顔で話すあの姿が……。

会長には無視されるほど嫌われ、大ちゃんには振られる。今日は厄日だ。

唇を噛みしめて、俯く私の頭に大ちゃんの大きな手が置かれた。振ったのに、慰めるよう優しく撫でるのはやめて……。

もう我慢するのも限界だ。

大ちゃんに再会して、不安になることもあったけど、ドキドキすることや嬉しいことの方が多かった。昨夜は私以外に好きな人はいないと言っていて、信じてとも言った。

だけど、今となっては何を信じろと言ったのか分からない。


「真帆、寒いだろ? 戻ろう」


大ちゃんの優しい声とあたたかい手が心に響かない。手を握られて、動くよう軽く引かれるが、私は動かなかった。
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