限りない愛~甘い彼に心揺れて~
最後に鮮やかなレッドのルージュを塗るが、すぐに拭き取った。濃い色で大人な雰囲気を出すのにいいと選んだものだが、会長に会うのには派手だ。

レッドより落ち着いたローズのルージュに塗り替えるが、鏡の中の自分を見て、小さなため息が出る。

どんなに着飾っても、モデルのユリナさんのようは華のある女性にはなれない。

せめて大ちゃんには、綺麗だと言ってもらいたいな。


ベージュ色のコートを羽織って、外に出るとちょうど家の前に車が止まった。副社長専用の運転手さんが
「おはようございます」とドアを開けてくれる。

恐縮しながら、乗り込む。大ちゃんのマンションとは違う方向に車は走り出した。

途中からは初めて通る道で、閑静な高級住宅街の中に大ちゃんが待つ家があった。

大きくて重厚な門が自動で開き、現れた光景に目を見張った。大きい家だろうと思ってはいたけれど、想像以上だった。

高級旅館と見間違えてしまってもおかしくない純和風な家がどーんと構えていた。整然とした広くてきれいな庭には、池まであった。あの池には鯉が泳いでいそうだ。
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