限りない愛~甘い彼に心揺れて~
専務は嬉しそうに笑って話す。喜ぶものを持っていくと言っていたが、まさか副社長だったとは。

物じゃなくて、人ではないか。予想外のことに脱力しそう。

それに喜ぶというより、驚きだ。


「真帆、そちらの方は?」

「あ、お兄ちゃん」

「あれ? もしかして、幹太(かんた)くん?」


私が兄を呼ぶのと同時に副社長が兄の名前を口に出す。兄は突然名前を当てられて、眉間にシワを寄せた。

怪しげなものを見る顔だ。


「幹太だけど?」

「お兄ちゃん、大ちゃんだよ。昔、お隣にいた」

「隣にいた……? あー! 大祐? わっ、すげー成長したな」

「それを言うなら、幹太くんだって」


兄は副社長の前まで行き、両肩を掴んで、副社長の顔を見上げた。身長170センチの兄からしたら、180センチを超えている副社長は見上げる形となる。

年齢は兄の方がひとつ上だが。

うちの母は専業主婦だったが、副社長のお母さんは働いていたので、副社長は我が家で放課後を過ごすことが多かった。

兄が小学生までは二人はよく一緒に遊んでいた。だが、兄が中学生になり、部活に入ったことから遊ぶことが少なくなっていた。
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