限りない愛~甘い彼に心揺れて~
まさか、それは憐れみな顔?

早々とクビになってかわいそうだなと思っているのだろうか。

だったら、ぜひとも考え直していただきたい。

しっかりと会社のために働くから、役に立てるよう頑張るから、解雇宣言だけはしないでいただきたい。

あの人は、もしかしたら人事部長なのかもしれない。私は泣きそうな顔で彼を見つめた。必死な思いが伝わってくれたらいい。

しかし、彼はそんな私の願いを吹き飛ばすかのように、ふっと視線を壇上の社長へと移した。

ああ……もうダメかも。

社長のスピーチが終わり、盛大な拍手が鳴り響く中、私は一人暗いオーラをまとっていた。

だけど、そんなオーラに気付かないめぐみが、今度は少し強めに腕を掴んでくる。


「このあと役員紹介だよね。あの人、誰か気になるね!」

「あー、うん、そうね……」


誰でもいいや。

クビになる私には、あの人が誰だとかこの会社でどんな役割をするのだとか一切関係ない。

式典に参加する意味もない。もう帰ろうかなと出入り口に目を向けるが、いくつかの出入り口にはスタッフが立っていて、そう簡単に出入りができそうもなかった。

仕方がない。終わるまで辛抱しよう。
< 4 / 202 >

この作品をシェア

pagetop