限りない愛～甘い彼に心揺れて～

現在の時刻は10時前。副社長のスケジュールによると打ち合わせをしている時間ではあるが、早くに終わっている可能性もある。

副社長本人に直接ではなく、秘書の人に確認するのでも大丈夫かもしれない。

副社長が直接出ることはないと内線を掛けたのだが、受話器を取ったのはまさかの副社長だった。驚きで受話器を落としそうになり、慌てて握り直す。

上擦った声ではあるが、見本誌を持っていくから時間をいただきたいと伝える。副社長は快く承諾してくれて、もし不在だったら待っていてほしいと言われた。

不在なら秘書の方に渡してしまおうとも思ったが、私の心は見透かされていたのかも。


エクセルの表作成に集中していたら、いつの間にか14時を過ぎていた。急いで途中までのを保存してから畑野さんにひと声かけて、足早に社長室へと向かう。しかし、その途中の廊下で足を止めることになる。


「おっ、宮坂さん、久しぶり！ どう慣れた？」

「緒方さん！ この会社に来るのは慣れましたけど、仕事は正直まだまだです。緒方さんの方は以前と変わらないですか？」

「そうだね。違うところはあるけど、基本は同じだよ」

「いいな。私も総務に行きたかったんですけどね」