限りない愛~甘い彼に心揺れて~
鳥肌を静めようと腕をさする私に副社長は首を傾げる。


「寒い? 暖房が入っていて、暑いくらいだけど、風邪でも引いた?」

「えっ、あ……寒くないです。元気です」

「うん、熱はないようだね」


副社長は私のおでこと自分のおでこにそれぞれ手を当てて、熱の有無を確認する。突然のことに私は硬直していた。

副社長の予想外ばかりの言動に私の心は乱れまくっている。


「本当に大切な物を見る目ですね。ユリナさん、そろそろ戻ってもらわないと時間だけが過ぎていきます」

「あ、はい。すみません」


畑野さんから声を掛けられて、私たちは我に返った。気付けば、そこにいるスタッフ全員が私たちに注目していた。

目立つことが苦手で、人に見られることを好まない私はどこかに隠れるか今すぐこの場から立ち去りたい気分になる。

姿勢良くして、カメラの前へと行くユリナさんの表情は真剣でキリッとしていた。プロのモデルとして、切り替えの速さに感心する。

逃げることしか考えていない私とは大違いだ。
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