君と出会えた物語。



終業の合図でお昼ご飯を食べに向かう生徒たち。



私はヒロの元に向かった。



「ヒロ!今日ね、片岡さんがお昼ご飯食べよって誘ってくれたからそっち行ってもいい?」



「えぇ…。うーん…いいよ!」



拗ねた顔してからニッと笑うヒロ。



「えぇって言ったのにいいんだ。」



「他の奴とも仲良くなるのはいい事だからな。一緒に食べたかったけど!」



一緒に食べたかった。



そんなこと言ってもらえるなんて思ってなかったから嬉しい。



「ごめんね。明日は一緒に食べてもいい?」



「当たり前!じゃまた後でな。」



私の頭をぽんぽんっと撫でてからヒロは江美と達也くんと食堂に向かった。



ヒロと話し終えるタイミングを伺っていたのかすぐに片岡さんが駆け寄ってきてくれた。



「あ、あの!下田さん…返事くれてありがとう。」



「私こそ手紙くれてありがとう。すごく嬉しかった…です。」



「ふふ。なんで敬語なの?」



「なんで…だろ?」



緊張してつい敬語になっちゃったのかも。



でも、笑ってくれる片岡さんに安心する。



「下田さんってもっと喋らない人だと思ってたけど…朝ヒロたちと話してるの見てそうじゃないんだって話してみたいって思って勇気出したんだ。」



「そうだったんだ。嬉しいな。」



ヒロたちと一緒に居るようになって壁を作ることを辞めたからかな。



そうなれたのもヒロの言葉があったから。



つくづくすごい人だなって思う。



「じゃあ、行こっか!」



隣のクラスのあいちゃんを迎えに2人で廊下に出た。



隣の教室に着くと教室の後ろに人集りが出来ている。



その中心にいるのがあいちゃんだ。



遠くから見ても1人だけ浮いて見えるぐらい完璧な女の子。



「あーいー!!ご飯食べに行こっ!」



「美優じゃん。遅いよ〜。」



ニコって笑うと天使が微笑んでるんじゃないかって思ってしまうくらい女の私でもドキドキする。



私…仲良くなれるかな…。



あいちゃんは一緒に居た集団に手を振ると駆け寄って来てくれる。



「あ、美優が言って子ってこの子?」



「そう!下田朱莉ちゃんだよ。」



き、緊張する…。



笑ってるだけが精一杯になっちゃう。



これじゃまた仲良くなれずに終わってしまうかも知れない。



「あかりん初めまして!桜木愛(さくらぎ あい)です。愛って呼んでね!」



あ、あかりん!?



って…私の事…?



「え、あの…。」



可愛い笑顔で差し出された手を握るとぶんぶん振り回される。



「ごめんね…愛はすぐ懐くしあだ名つけたがるから嫌な時は嫌って言っていいからね。」



片岡さんは困った顔で振り回される私の手を押さえてくれる。



思わず笑みがこぼれた。



もっと喋りにくいかと思っていたから人見知りしない愛の性格に私の緊張なんてどっかいってしまう。



「ぜんっぜん!嫌じゃないよ。驚いたけど…可愛くてなんか緊張ほぐれちゃった。」



「そっか〜良かった。あ、私の事美優でいいからね、私は朱莉って呼ぶ!」



「うん!美優誘ってくれて本当にありがとう。」



噂通り愛は誰にでも優しくて私が悪く言われてたことも今なら分かる。



こんなにいい子が居たら前の私なんて…最悪でしかない。



私って何も知らなかったんだな。



「あかりん!美優!お腹空いたから屋上行くよ〜。」



少し先を歩いて何度も振り返る愛。



「ふふ…愛ってなんかわんちゃんみたいでしょ?」



難しい顔をしてしまっていたのに気づいてか、笑いながら美優が私に問いかけてくれる。



「なんか分かるかも。愛って本当に可愛いよね!」



愛嬌があってほっとけない感じがすごく似てる。



本当に可愛い。



「朱莉も可愛いよ。お世辞とかじゃなくて。でも、なんか前は怖かったかな…。今はそんなことないよ、面白いしいい子だなって思う!」



「ありがとう!」



他人の事拒んでたもんね。



怖いと思われてもしょうがないし…でも、今は違うって言ってもらえて自信になったし変われてるって知れて嬉しい。


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