君と出会えた物語。
「真由ちゃん、私伝える。今から。電話してもいい?」
真由ちゃんは驚いてたけど、すぐ笑ってくれた。
「朱莉変わったね!もちろん、いいよ。」
携帯を開いてヒロのトークを開く。
通話ボタンを押す前に1回だけ深呼吸をした。
「よし…。」
トゥルートゥルルルー…
「朱莉!?お前今どこに居んの?」
すぐに通話は繋がった。
ヒロはいつもより早口で少し怒っているのが声から分かる。
「…ごめんね、大丈夫だよ。今ね、真由ちゃんと居るよ。」
話す時にチラっと真由ちゃんを見ると頷いて笑ってくれる。
だから、ゆっくり落ち着いて話せた。
「真由ちゃん…あ、転校生ちゃんか!仲直りできた?」
「出来たよ。ヒロ、私の事知ってたんだね。」
「…黙っててごめんな。同じクラスになってからずっと転校生ちゃんが言ってた子って分かってた。でも、あの写真みたいに笑うお前は居なくて…きつい言い方とかしてごめんな。」
そうだったんだ…。
でも、もし全部ヒロから聞いていたらここまで変われてなかったかもしれない。
「謝らないで…ヒロのおかげで変われたんだもん。それでね、もう一つ話があるんだ。」
そう。春菜って子の事。
「どした?」
そう言うヒロの声はいつも通りに戻っていた。
「あのね…春菜って子分かる?」
電話の向こうから声が聞こえなくなった。
あれ?と思って画面を見るとまだ繋がっていてもう一度耳にあてた。
「ヒロ…?」
「なんで朱莉が春菜の事知ってんの?なんかされたのか?」
正直に言うか悩んだ。
でも、春菜って子が私にした事を言ったらヒロは絶対に怒る。
「…ううん。そうじゃないの…たまたま噂で聞いて…。最近ずっと一緒に通学してたの彼女さんに悪いなって。」
手に変な汗が出る。
決意を決めて電話したのに、
返事を聞くのが怖い。
「春菜は元カノ。2週間くらい前にすれ違いで別れたけど、今はただの友達だよ。…そんな事朱莉が気にすんなっ!」
ヒロの答えを聞いてすごくホッとした。
「そっか、よかった…。あのね、伝えたいことがあるの。」
罪悪感に襲われていたから肩の力が抜ける。
2週間前って事は一緒に通学する少し前。
私が原因で別れたとかじゃないんだ。
良かった…。
本当に良かった。
誰のものでもなくて。
「とりあえず迎えに行く。今どこにいるの?遅いし、俺も伝えたいことあるから家まで送るわ。」
辺りを見ると遊んでたはずの子供達の姿はもうなかった。
ここがどこか分からない私は真由ちゃんに電話を代わってもらって場所をヒロに伝えてもらった。
「ちゃんと話せて良かったね。」
ヒロが迎えに来てくれるまで真由ちゃんは一緒に待って居てくれた。