君と出会えた物語。
浴衣で来れば良かったな。
通り過ぎて行く女の子達を見てそう思った。
「え!朱莉?」
「...江美?」
どうしよ...
みんなに嘘ついたままだった。
「帰って来てたの?心配してたんだよ。」
大事な友達までヒロとの思い出を忘れるために消してしまっていた。
「あのね、旅行...嘘だったの...。」
「え?」
「本当にごめん。」
「ごめんじゃ分かんないんだけど...どういうことなの?」
江美は声を荒あげた。
「おい、江美。やめろよ!」
裕太が江美と私の間に入る。
2人の後ろには達也くんと結海...
そしてヒロと浅野さん。
なんで2人がいるの?
意味わかんない...。
「なんであの2人と一緒なの...。嘘ついたことは本当にごめんって思うけど...そのぐらい辛かったの。誰とも会いたくなかったし、無理に笑うのも限界。限界だったのになんなの!」
「朱莉も落ち着けって。」
「うるさい!」
裕太が掴んで来た手を乱暴に振り払った。
「ご、ごめん。そんなに朱莉が傷ついてるなんて...思わなくて...。」
江美は泣き出してしまった。
でも、私の怒りは収まらない。
口からどんどん溢れてくる。
「心配してたって言うくせになんで?私のことなんてなんとも思ってないくせにそんなこと言わないで!」
「朱莉の気持ちもわかるけど、ヒロだって私達にとっては友達だよ。」
江美を責めるのを止めるように結海が言った。
結海の言ってることは分かる。
分かるけど...。
じゃあ、私は?
私はどうしたらいいの?
ヒロとも浅野さんともなんともない顔で関わっていかないといけないの?
「...そうだよね。後から来た私なんて...みんなは幼馴染だもんね。」
皮肉っぽい言い方しかできない。
けど...私の気持ちなんて無視じゃん。
「そう言うことじゃないよ!朱莉のこともちゃんと友達だと思ってる。」
「友達だと思ってるならなんで...私、その中に居れるぐらい強くない。無理。」
「...。」
誰も返す言葉がなくなったのか口を開かない。
そんなことにもイライラする。
「みんな、私のことなんかどうだっていいんだよ。もうほっといて。」
みんなの間を通り抜ける。
ここから逃げたい。
もう嫌だ。
「おい。それが悲劇のヒロインだって前も言ったんだよ。」
ヒロが私の腕を掴んだ。
「離してよ!誰のせいだと思ってんの。」
振り払おうと思っても強い力には敵わない。
「じゃあ、俺のせいじゃん。みんなは悪くねぇだろ。謝れよ!」
「はぁ?なんで私が怒られないといけないの?旅行行くって嘘ついたことなら何回でも謝るけど他になにに謝ったらいいの、教えてよ!」
「可愛くねぇ...うざい。お前のそういう所俺嫌いだわ。」
掴まれていた腕を急に離されて勢いよく倒れた。
ヒロの言葉に怒りは収まり涙が溢れ出した。
一番好きな人からの嫌いは一番傷つく。
「本当に...分かんないの。どうしたらいいのか。みんなのことも...ヒロのことも...好きなのになんで分かってくれないの...。」
綺麗に終わったはずの初恋は封じ込めた気持ちのせいでどんどん悪い思い出になっていく。