君と出会えた物語。
「...言葉にしないからだろ。言わないと誰にも伝んねぇんだよ。」
荒あげていた声じゃなくて落ち着いた冷たい言い方だった。
なんでも分かってくれると甘えていたんだって気付かされる。
何も言わず距離を置いたのは私。
あの時も自分の気持ち伝えてたら変わっていたのかな。
「私、変われてなんかいなかった。全部抱え込んでそれでも分かってくれるって思ってしまっていて...悪く言ってごめんなさい。」
「朱莉...お前の言ってることも分かる。俺たちにも責める資格なんかない。ヒロのことを優先したのは事実だ。だから、自分を責めるな。」
ずっと口を開かなかった達也くんが言う。
自分を責めるな...か。
達也くんは、口数は少ないけど誰よりもみんなのことを見てくれている。
「私...もう大丈夫なんだって勝手に思ってた。朱莉のことちゃんと考えられなくてごめん。」
泣いていた江美は頭を下げる。
言い過ぎたなんて分かってる。
私、自分のことしか考えてなかった。
「いつも一番側に居てくれたのにひどいこと言ってごめんね。」
江美はヒロと別れて辛い時ずっと側に居てくれた。
なのに、なにも伝えなかった。
「そんなんだから捨てられるんだよ。」
「おい!奈々。」
「だって〜。」
浅野さんの言うことは正しい。
「そうだね。」
浅野さんにそう言って立ち上がりとぼとぼと歩く。
振り返りなんてしない。
今度こそちゃんと変わろう。
自分のために...。