君と出会えた物語。
「はぁ...朱莉!...朱莉!」
花火大会だから溢れんばかりの人。
けど、なんとしても見つけないと...。
どこにいるんだよ。
人をかき分け走った。
「...離してっ。」
「朱莉?」
今の声は間違いなく朱莉だ。
何処だ...。
辺りを見渡して朱莉の姿を探した。
「...あ!朱莉!」
ガラの悪そうな3人組の真ん中に朱莉の姿を見つけた。
「おい。離せよ。」
そう言ったのは俺じゃない。
「...ヒロ。なんで?」
ズキンっ
朱莉を後ろから抱きしめるように守るヒロ。
正直絵になる2人。
いやいやなに嫉妬?
そんな場合じゃないだろ...俺。
「すみません。両方俺の連れなんで勘弁してもらえません?」
睨んでるガラの悪い3人の後ろから声をかけた。
「はぁ?こっちは気ぃ悪りぃんだよ。」
振り向くと同時に殴りかかられる。
「おっと。危ない...暴力はダメですよ。お兄さん。」
勢いのまま倒れた1人に見下ろすように言った。
「な、なんだよ。もういいや。行くぞっ。」
もっとやばいことになるかと思ったけど、あっさり走って行く3人。
見た目だけかよ。
思わず笑いがこぼれた。
「...俊。勝手に居なくなってごめんなさい。」
朱莉の声に振り向くともう2人は離れていた。
「ちゃんと連絡ぐらいしてよ。」
軽く朱莉の頭を小突く。
「ごめんね。」
「俺戻るわ。みんな置いて来たし。」
ヒロはそう言って歩き出した。
「ヒロっ!助けてくれてありがとう。さっきもだし...いつも正しいこと教えてくれてありがとう。」
「そんなことない...。辛い思いさせてごめんな。」
そう話している2人にすごく妬ける。
2人の世界みたいな空気。
俺にこの2人の間に入れるなんて思えない...勝ち目ないな。
「俊またな。」
話し終えたのかヒロに振られた手を振り返す。
朱莉はヒロの背中を名残惜しそうに見ている。
「とりあえず虹に戻ろっか。」
そんな朱莉にこっちを見て欲しくて声をかける。
「うん!」
ふわっと笑う彼女はすごく可愛くて思わず見入ってしまう。
どうしたら俺の彼女になってもらえるんだろ...。
前は冗談ぽく流してしまったけど、本当に一目惚れだった。
俺が守りたいって思った。