君と出会えた物語。
第14章*⑅
お母様は会社に行かないとらしくてお店の前で解散した。
会社…倒産しちゃうのかな…。
少し前は当たり前だったことが全て変わってしまった。
幸せな事もたくさん増えたけど、悲しい事も苦しい事もその分たくさん襲いかかってくる。
ただただ幸せでいるってことは叶わないのかな…。
変わらないものなんてないのかな。
とぼとぼと歩いて家の前に辿り着いた。
けど、入らずに眺めてしまう。
ここで育ってきたのにもうすぐ自分の家じゃなくなる…。
そう思うとすごく切ない。
「なんで…私ばっかり…もっと幸せな人はたくさんいるのに!」
溢れ出る涙に怒りまで湧いてくる。
怒りにまた泣けてくる。
「朱莉?」
聞き覚えのある声。
いつもタイミング悪く会ってしまう1番会いたくない人。
「なんで泣いてるんだよ…。」
涙でぼやけた視界にヒロと浅野さんが見えた。
「ほっといて。」
視線を逸らして言い放った。
早くどっかに行って欲しい。
「いや…ほっとけねぇだろ。」
来た道を戻るように歩き出そうとすると。
歩み寄るヒロの足音が止まった。
「いいじゃん。ほっといてって言ってんだからほっといてあげたら?」
浅野さんの冷たい声が聞こえる。
「…。」
「ほら、行こっ?今日はなんの映画観よっか?」
後ろを通り過ぎる2人の足音。
私にはない幸せがある2人。
神様…どこまで私を傷付けたら気が済みますか?
私、もう耐えられないです。