蜜月は始まらない
けれど今の自分は、少しだけドキドキしながら静かに母の話の続きを待ってしまっている。私もたいてい、お母さんたちのことを悪くは言えないだろう。
「聞いてみたらね、錫也くん、いい歳になるのにこれまで一度も彼女ひとり家に連れて来たことないんですって。ゆきのさんが言うには、そもそも野球ばっかりして生きてきたものだからそんな甲斐性あるのかすら怪しい、今真剣にお付き合いしてる相手がいるそぶりだってないし、まさかこの先ずっとひとり身でいるつもりなんじゃ……って、将来を憂いていらしたのよ」
「う……うーん、そう、なんだ」
途中に出てきた『いい歳』というワードは、彼と同い年である自分にはまんまブーメランなので居心地が悪い。
そしてさらに、居心地の悪い話は続くわけで。
「でね、ついお母さん、ポロッとあんたの話しちゃった」
「はあっ?!」
てへっと首をかしげながら放たれたセリフに、思わず非難めいた声をあげてしまう。
「ごめんごめん」なんて口では言いながら、それでもお母さんはあまり悪びれた様子もなく語る。
「お母さんも、誰かれ構わずしゃべるわけじゃないわよ。今回は、ゆきのさんだって結構突っ込んだ話してくれたのよ? こっちも腹割って同じ土俵に上がるのが筋じゃない?」
「そん……っいや、うーん、それはそうかもしれないけど」
当然のように言われてしまえば、なんとなく納得してしまう……ような……?
単にうまく丸め込まれているだけだと私が自分で気づくより先に、ペラペラとお母さんは畳みかけた。
「聞いてみたらね、錫也くん、いい歳になるのにこれまで一度も彼女ひとり家に連れて来たことないんですって。ゆきのさんが言うには、そもそも野球ばっかりして生きてきたものだからそんな甲斐性あるのかすら怪しい、今真剣にお付き合いしてる相手がいるそぶりだってないし、まさかこの先ずっとひとり身でいるつもりなんじゃ……って、将来を憂いていらしたのよ」
「う……うーん、そう、なんだ」
途中に出てきた『いい歳』というワードは、彼と同い年である自分にはまんまブーメランなので居心地が悪い。
そしてさらに、居心地の悪い話は続くわけで。
「でね、ついお母さん、ポロッとあんたの話しちゃった」
「はあっ?!」
てへっと首をかしげながら放たれたセリフに、思わず非難めいた声をあげてしまう。
「ごめんごめん」なんて口では言いながら、それでもお母さんはあまり悪びれた様子もなく語る。
「お母さんも、誰かれ構わずしゃべるわけじゃないわよ。今回は、ゆきのさんだって結構突っ込んだ話してくれたのよ? こっちも腹割って同じ土俵に上がるのが筋じゃない?」
「そん……っいや、うーん、それはそうかもしれないけど」
当然のように言われてしまえば、なんとなく納得してしまう……ような……?
単にうまく丸め込まれているだけだと私が自分で気づくより先に、ペラペラとお母さんは畳みかけた。