蜜月は始まらない
あっさり返ってきた単語に、二の句が継げなくなって口を噤む。
名目上は婚約者。おまけに一緒に暮らしておきながら──その“かわいい寝顔”を見たことがないとは、まさか言えない。
けど、とりあえず。
「やってみます」
言いながらこくりとうなずく、と。
タイミング良くと言うべきか、後ろの座席にいたチームメイトのひとりがなぜか急に身を乗り出して、通路から顔を出すように話しかけてきた。
「な、柊! 俺にも今度彼女のこと紹介してくれよ~独占欲丸出しのおまえ、見てみたかったんだけど!」
ニヤニヤ笑いでそんなことを言うその先輩は、都合がつかず顔合わせの飲み会に参加できなかったメンバーのひとりだ。
どうやら誰かに、あの夜の話を(おそらく誇張多めで)聞き及んでいるようだ。
そのうえで、イジる気満々のこの発言。
さっそく俺は、もらったアドバイスを実践してみることにする。
「そうですね、機会があれば。独占欲はまあ、相手がこの先の人生をともにしたいと思うほどの唯一無二の存在なら当然じゃないですか? 性格いいし料理上手だし笑顔がかわいくてたまらないし、もう一生手離せませんね」
上半身をひねって先輩を振り返りながら、尚人さんの言葉通り淡々と真顔で話してみた。
すると、これを聞いた先輩はあんぐりと口を開けて。
名目上は婚約者。おまけに一緒に暮らしておきながら──その“かわいい寝顔”を見たことがないとは、まさか言えない。
けど、とりあえず。
「やってみます」
言いながらこくりとうなずく、と。
タイミング良くと言うべきか、後ろの座席にいたチームメイトのひとりがなぜか急に身を乗り出して、通路から顔を出すように話しかけてきた。
「な、柊! 俺にも今度彼女のこと紹介してくれよ~独占欲丸出しのおまえ、見てみたかったんだけど!」
ニヤニヤ笑いでそんなことを言うその先輩は、都合がつかず顔合わせの飲み会に参加できなかったメンバーのひとりだ。
どうやら誰かに、あの夜の話を(おそらく誇張多めで)聞き及んでいるようだ。
そのうえで、イジる気満々のこの発言。
さっそく俺は、もらったアドバイスを実践してみることにする。
「そうですね、機会があれば。独占欲はまあ、相手がこの先の人生をともにしたいと思うほどの唯一無二の存在なら当然じゃないですか? 性格いいし料理上手だし笑顔がかわいくてたまらないし、もう一生手離せませんね」
上半身をひねって先輩を振り返りながら、尚人さんの言葉通り淡々と真顔で話してみた。
すると、これを聞いた先輩はあんぐりと口を開けて。