蜜月は始まらない
「わっ、えっ、柊くん大丈夫?!」
まさかどこか痛めでもしなかったかと、慌てて彼に近づいた。
錫也くんは床に寝転がり、呆然と天井を見つめている。
ついとっさに出てしまった苗字呼びにも気づいていないようだ。
ケガが心配で、錫也くんの傍らにひざをつく。
「どっか痛めてない? 頭打ったよね?」
「……いや、大丈夫。驚かせて悪かった」
とは言うものの、彼は起き上がろうとしない。
ますます心配になって顔を覗き込もうとしたら、それより早く反対側へ背けられた。
「柊くん?」
「……錫也だ。華乃は……その、格好」
「あ」
言われて、自分の姿を見下ろす。
正座をしている太ももが丸見えだ。私はそそくさとワンピースの裾を引っぱって伸ばした。
「あの、これは……ワンピースと一緒に、下に履くレギンスを持っていくの忘れちゃって。ごめんなさい、お見苦しいものを……」
かあっと頬を熱くさせながら、目を泳がせる。
み、見られた……運動嫌いな私のプニプニでだらしない太もも……。
こちらに後頭部を向けたままの彼が、小さくため息をつくのが聞こえた。
「見苦しく……ないから、今こうして困ってる」
……え?
つぶやきは声にならずに、唇だけが動く。
そこで錫也くんが、むくりと上半身を起こした。
まさかどこか痛めでもしなかったかと、慌てて彼に近づいた。
錫也くんは床に寝転がり、呆然と天井を見つめている。
ついとっさに出てしまった苗字呼びにも気づいていないようだ。
ケガが心配で、錫也くんの傍らにひざをつく。
「どっか痛めてない? 頭打ったよね?」
「……いや、大丈夫。驚かせて悪かった」
とは言うものの、彼は起き上がろうとしない。
ますます心配になって顔を覗き込もうとしたら、それより早く反対側へ背けられた。
「柊くん?」
「……錫也だ。華乃は……その、格好」
「あ」
言われて、自分の姿を見下ろす。
正座をしている太ももが丸見えだ。私はそそくさとワンピースの裾を引っぱって伸ばした。
「あの、これは……ワンピースと一緒に、下に履くレギンスを持っていくの忘れちゃって。ごめんなさい、お見苦しいものを……」
かあっと頬を熱くさせながら、目を泳がせる。
み、見られた……運動嫌いな私のプニプニでだらしない太もも……。
こちらに後頭部を向けたままの彼が、小さくため息をつくのが聞こえた。
「見苦しく……ないから、今こうして困ってる」
……え?
つぶやきは声にならずに、唇だけが動く。
そこで錫也くんが、むくりと上半身を起こした。