蜜月は始まらない
「なに、もしかして女から? 俺がオンナノコ紹介しようとしても散々逃げてたくせに、いつの間にやらちゃっかり彼女ゲットしちゃった?」

「はあ?! 錫也に彼女?!」

「どこの美女だ、このイケメンクール野球バカの鉄壁のハートを仕留めたのは」

「それを言うなら『射止めた』じゃないっすか?」



周りにいた他のチームメイトたちもなぜか話に参加してきて、もはや収集がつかない。

そもそも俺、スマホ見て無意識に笑ってたのか……?

どうやら自分でも思う以上に、俺は相当浮かれているらしい。
こうなるのがわかっていたから、気をつけなければいけなかったのに……。

ともあれ、まずは返信だ。その前にもう一度、試合終了直後あたりの時間に受信していたメッセージを読み返す。



【錫也くん、今日もお疲れさま。それから、ヒーローインタビューおめでとう!
ちなみに、今日のお夕飯は中華です。気をつけて帰ってきてね】



……ダメだ、今自分でもにやけそうになったことに気づいた。

意識して顔を引き締めつつ、【ありがとう。もうすぐ球場出る】と我ながら淡白な文章を送信する。

とりあえず無事返信を打てたことに小さく息をつくが、そこで周囲からやけに期待のこもった眼差しを向けられていることに気づきうんざりする。
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