【短編ホ】遊びましょ?
「ねえ、聞いた?」
「あれでしょう、田口さんちのお子さんでしょう?」
「そう、可哀想に……。怖いわよね」
幼稚園バスの停留所。
くすんだ団地が建ち並ぶ中に書き足されたような、真新しいその側に数人の女性が固まってひそひそと話しては眉を寄せたり身を震わせたりしていた。
そんな彼女たちの横を、少女は再び始めたケンケンパで通りすぎる。
「大きな栗の、」
少女が歌い出したその時、
彼女の真正面に、黄色い幼稚園バスが突っ込んできた。
「ママー、ただいま!」
青い生地のふわりとしたシャツに、灰色の短パンを着た男児がバスからかけ降りてきた。
「おかえり、湊」
優しい笑顔で男児を迎える女性の後ろ。
破れた白いシャツを泥と血で染め、しわくちゃの紺色のプリーツスカートを履いた少女が、無表情で彼を見ていた。
「……木の下で~。…遊びましょ?」